新規開業に向けて準備しておきたいこと
新規開業に向けて準備しておきたいこと
当センターでは、平均して年に平均して4~5教室程度の開業ご支援をさせていただいております。
それぞれのオーナー様とは、開業のご検討を始められた当初の段階から、様々な話し合いをさせていただいております。
そのような話し合いの中で、よくテーマになる内容を今回のコラムでは取り上げてみたいと思います。
【開業への道のり①】 心の準備
「プログラミング教育」は、これから大きな市場となっていくことが確実な業界ではあります。
しかし成長市場であることに着目し、新規参入されるオーナー様も激増していることから、エリアによっては既に激しい競合関係が発生してきております。
マーケティング用語でいうところの「レッドオーシャン」という状態です。
競争が激化している中、「何かブームに乗っている事業は?」という考えだけで参入をされることはお勧めいたしません。
「看板を出せばすぐに多数の生徒さんが殺到する」ということではありませんので、軌道に乗るまでの一定期間は、通常の事業と同じように広報施策を粘り強く続けていくという姿勢も必要となります。
参入される前に必ず考えていただきたいのは、オーナー様ご自身が本当に「教育という仕事が本当に好き」なのかということです。
良き授業をするために一生懸命に予習をし、そして子どもたちの日々の成長を我がことのように嬉しく感じられるのか、ご自身の性格について冷静に見つめてみて下さい。
「教育という仕事が本当に好き」でなければ、経営が軌道に乗るまでの助走期間中に心が折れてしまい、走り切ることはできません。
いま現在のオーナー様のITスキルそのものは、そんなに大きな問題ではありません。
当センターの支援システムをご利用いただくことで、プログラミングの技術は自然と身に付けていただくことができます。
あくまで大切なのは、「教育という仕事が本当に好き」なのかということです。
【開業への道のり②】 資金の準備
開業にあたっては、当然ながら必要な資金を事前に準備しておく必要があります。
M&Aによる事業継承などの特殊な例を除き、ほぼ全ての事業は開業当初は赤字状態からスタートします。
スタート時には設備投資などの初期費用の支出も多く、それに対して顧客が定着するまでは収入が少ないという状況がしばらくは続きます。
その流れの中で、収支マイナスのピークとなるタイミングがいつなのか、またそのタイミングにおけるマイナス額はどの程度になるのか、しっかりと予測を行い準備すべき資金の額を決めておきましょう。
必要な資金を算出するために、表計算ソフトなどを活用して「収支計画表」を作成してみましょう。
下の表とグラフは、小規模開業を目指される場合の「収支計画表」の一例です。
※実際にはもう少し細かい項目設定が必要です。ご希望の場合は当センターでも一緒にシミュレーションを作成させていただきます。
この試算で把握しておくポイントはいくつかあるのですが、必要資金の目安となる部分は「3ヶ月目」の「累積収支」のセルです。累積収支のマイナスが一番大きいのがこのセルとなっています(-149万円)。
この数値こそが、最低限準備しておくべき資金となります。
ただこれはあくまでも開業前の予測にすぎません。
予測シミュレーションと現実の経営状況にブレが生じることもありますし、入金日や支払日が月をまたいでずれ込むことということも日常的に発生します。
ですので、実際にはこの金額よりもゆとりをもった資金を準備しておく必要があります。
資金の調達方法についても考えておきたいものです。
資金の準備に際して、まず考えが浮かぶのは、手元の預貯金等の資産を利用されるということです。
ただし、預貯金等の額に不安がある場合には、融資や助成金の利用を一緒に検討する必要があります。
例えば200万円の手元資金がある場合、その全てを開業費用に充てることは大きなリスクを伴うことになります。
もし短期間でその200万円の資金を使い果たしてしまった場合、以降の経営改善のための資金が枯渇し、事業を成功させるという目標が遠のいてしまいます。
であるならば、200万円の手元資金はそのまま据え置いておき、開業のための資金は別に借り受けするという考え方が安全でもあります。
一般に創業融資の場合、事業計画がしっかりとしていれば、手元資金の数倍程度の借り入れができるケースがほとんどです。また自治体によっては創業助成金等の手厚いサポート制度もございます。
少し話は逸れますが、将来的に事業借り入れをしたいとお考えの方は、日常の生活において決済事故を起こさないという心がけも必要です。
クレジットカードでの支払い遅延や、カードローンの安易な利用があると、お借り入れの審査において不利になってきます。
開業資金については、第三者の出資により調達をする方法もあります。
しかしその場合(特に会社法人として設立する場合)、経営権や利益配分等についてしっかりとした取り決めを事前にしておいてください。
その取り決めがアバウトな場合、後に大きなトラブルが発生することもありますので要注意です。
また会社法などの基本的なルールもしっかりと学んでおきたいものです。
【開業への道のり③】 組織の形態
事業を始めるときに、「個人事業主」の形態を飛ぶべきか、それとも「法人」を設立するのか、この点も判断に迷うところです。
個人事業主のメリットは、設立手続きが簡単で費用が低く、事務負担も少ない点です。
しかし、法人に比べ信頼度が低くみられる場合もあります。また収入が増えると所得税率が著しく上昇するという点は大きなデメリットでしょう。
一方、法人化のメリットは、信頼感が高く企業などとも取引がしやすい点です。所得税額の上限も個人事業主と比べると抑制をされています。
さらにオーナー様や従業員が社会保険に加入できるという安心感もあります。
ただし、設立手続きや開業後の事務処理等の負荷が高くなるというデメリットもあります。
いずれかお迷いの場合には、初めは個人事業主としてスタートし、成長に応じて法人化を検討するされるのも一案です。
またこういった法人の形態とは別に、「一人で始めるのか」「複数人で始めるのか」というお悩みを持つ方も多いようです。
創業メンバーそれぞれが明確な強みを持っており、その専門性を組み合わせることで事業の成長が加速できるという確信がある場合には、複数人でのチーム経営は悪いものではありません。
しかし「一人で始めるのが不安だから」などの漠然とした理由で複数人で事業を始めることは避けたいものです。
【開業への道のり④】 教室物件の確保
新たに教室をオープンされる場合、固定物件を確保するのか、レンタルスペースにて運営を行うのか、この点で迷われるオーナー様もいらっしゃいます。
保護者の安心感を得るためには、固定物件での開講がもちろん有利ではあります。
しかしレンタルスペースのご利用時においても、十分な配慮を行うことで、信頼度の高い教室運営を行うことは可能です。
(参考記事)
『レンタルスペース(貸会議室など)での教室開業は可能でしょうか?』
https://iesk.net/column/10427
物件の広さについては、指導を行うスペースは「一坪で2人」という収容人数を想定して下さい。
それに加え、先生のための事務スペースや、物品を置いておくスペースなども考慮に入れておく必要があります。
例えば、最大5名程度の同時学習が可能な教室の場合ですと、5坪程度の物件を確保しておくとゆとりを持った運営ができます。
なお固定教室を準備される際の設備についてですが、過剰な設備投資を行ってしまうオーナー様もよく見受けられます。
特に「自分の城」を初めて持つ場合、豪華でオシャレな教室にしたいという心理は十分に理解はできるのですが、収益化が見込める範囲内での投資に留めておきたいものです。
【開業への道のり⑤】 備品の準備
教室オープンに際して、最低限必要な備品は以下の通りです。
<学習設備>
机・椅子・ホワイトボード
<機器>
パソコン・通信環境(電話設備や回線契約とルーター)・プリンター(コピー機兼用)
<外観>
看板(もしくは掲示)
プログラミング教室を新規開業する場合は、これだけの設備が揃えば最低限の教室運営が可能です。
この中で、特によくご相談をいただくことは、パソコンの準備に関することです。
生徒にパソコンを持参させることも可能ですが、できれば教室でパソコンを準備しておくことをお奨めいたします。
家庭用のパソコンを教室に持参した場合、ログインに関するトラブルや、データ保管に関するトラブルが発生する確率が高くなり、思い通りに授業が進行できなくなる恐れがあります。
そしてOSについてですが、基本的な学習コースではWindowsがおススメです。
購買コストが抑えられる点も嬉しいのですが、多くの生徒たちにとって馴染みがある画面構成だということが安心できます。もちろん機器は中古機種で問題ありません。
Windowsの場合は、Windows11が導入されているか、もしくはアップデートが可能な機種をお選びください。
(一般的に、Intel第8世代以上の機種ですと無理なくアップデートが可能です)
さらに、快適な動作を維持するために、SSD搭載、4GB以上のメモリ搭載、といったスペックのものを準備しておきたいものです。
通信環境について、家庭内や事業所内の無線LANをご利用になられる場合には、ルーターの設定にお気を付けください。
ゲストポートが利用可能なルーターを導入し、教室以外の機器に生徒がアクセスできない環境を構築しておきましょう。最近では市販のルーターでもゲストポートを利用できるものが増えてきております。
またモバイルルーターをご利用になられる場合は、教室での通信速度や、ルーター機器の同時接続可能台数についても事前に確認をしてください。
電話回線については、高価なビジネスフォン等の導入は避けたいものです。機器のリース費用等が大きな負担になってきます。
スマートフォンが一台あれば個人番号とは別に業務専用のIP電話が導入できます。また無料のLINE公式アカウント等を通話窓口にするという方法もあります。
最後に
以上、簡単な内容にはなってしまいましたが、開業前のよくある代表的な相談事例についてご紹介をさせていただきました。
詳細のご相談については随時承っておりますので、遠慮なく当センターにお声かけ下さい。