「退会率」を下げるための取り組みとは
「退会率」を下げるための取り組みとは
経営の安定化について教室オーナー様と会話していている際に、時折気になることがあります。
勧誘や入学促進の施策導入には熱心な先生は多いのですが、退会防止についての話題になることがほとんどないのですよね。
募集営業に関しては「色々と工夫して頑張ってみよう」と意欲がある方が多いのですが、退会防止の施策については「辞めていく人は仕方ないよね」と本音を口にしない先生が多いように感じています。
もちろん、退会というネガティブなことを深く考えたくない気持ちは理解できます。
退会というのは、自身の教室運営や授業運営を否定されたことに等しいですし、それを認めることでプライドも傷つくこともあるでしょう。
しかし、やはり抑止への取り組みを熱心に行わないことには、教室経営を長期的に安定化することはできません。
教室の安定経営に向けては、以下の2つの数式を意識しておく必要があります。
在籍生徒数 = 既存生徒数 + 新規生徒数 - 退会生徒数
受講料収入 = 在籍生徒数 × 月謝金額
新規生徒数がいくら上向きになっても、退会生徒数がそれ以上に増えると受講料収入は維持できません。
生徒の退会を少しでも抑制するために、チェックしておきたいポイントについて、今回のコラムでは考えていきたいと思います。
【退会抑止策1】 授業内容の確認
現在個々の生徒にご提供なされている授業内容と、それぞれの生徒の知識レベルや意欲と合致しているか、注意深く観察しておく必要があります。
「こんな勉強なら教室に通わなくてもできちゃう」と生徒や保護者に感じられてしまった場合、高確率で退会に繋がることになります。
近年ではYoutube等で基本スキルを既に独学して入学してくる生徒たちも増えてきています。
例えば、Scratchの基本操作を既にマスターしている生徒に、同コースの第1章からコツコツ学習をさせたとしても、本人はつまらなく退屈な時間を過ごすことになります。
入学時の面談で実力を確認し、さらに授業時の制作作業を注意深く観察することで、本人のレベルと提供しているカリキュラムが合致しているのかを常に確認しておく必要があります。
当センターの提供する「まなぼクラウド」では、学習単元のスキップや、上位コース(HTML・JavaScript・Pythonなど)へのレベル移行が、先生のお手元で簡単に操作できるようになっています。生徒に合わせた学習進度を柔軟に設定してご利用ください。
また、当センターのカリキュラムの範囲内では生徒の意欲を喚起できない。そのようにお感じになられる場合には、新たなカリキュラム開発を行っていただくか、他の事業者様の教材を併行利用をしていただいても構いませんのでご安心ください。
【退会抑止策2】 受講環境の確認
学習ルームやエントランスは清潔に保たれているでしょうか。
どの教室様でも、床や机の清掃や窓ふき等は比較的まめに実行されています。
しかし掲示物が乱雑であったり、パソコンや周辺機器等(特にキーボードやマウスなど手に触れるところ)に埃や汚れが付着していたり、清掃が隅々まで行き届いていないケースが多々見受けられます。
また、生徒間で学習に無関係の私語が飛び交っていたり、歩き回ったり飲食物を摂りながらの受講を認めてしまっていないでしょうか?
(手元での純粋な水分補給は認めるべきですが)
不潔さや集中できない雰囲気を嫌う生徒も多いものです。学習環境が整備されているか毎日点検をしてみて下さい。
もちろん先生ご自身の身だしなみにも、十分に気を配ってください。
ボサボサの髪、ヨレヨレのシャツやズボンなどは禁物です。
授業の際には同じパソコンで寄り添って指導するシーンも多々ありますので、口臭・体臭の発生にもお気を付けください。
【退会抑止策3】 保護者対応の見直し
どの分野の習いごとにおいても、新規入会/継続/退会の意思決定を行うキーマンは保護者です。
そして、母親がプラン策定の中心となり、父親が承認を行うというご家庭が多いのではないでしょうか?
(母親が/父親がという書き方に抵抗を感じる読者様もいらっしゃいますでしょうが、筆者の所感ですのでご容赦下さい)
しかしプログラミング教室では、そのキーマンであるはずの保護者様が、子どもの成長を実感することがとても難しいという特殊性があります。
先生方よりITについての知見が深い保護者がそもそもほとんどいらっしゃらないですし、生徒たちも習い始めるとすぐに保護者のIT力を凌駕していくからです。
そこで保護者は、学習成果そのものではなく、その他の面にて良い教室/悪い教室との評価を下していくことになります。
例えば、
・この教室(先生)は、わが子ときちんと向き合ってくれているのか
・わが子はこの教室に通うことを、この先生に会うことを、楽しみにしているのか
・この教室(先生)は、情熱をもって指導に取り組んでくれているのか
・この教室(先生)のことを、他の保護者さんはどのように思っているのか
など、そんな抽象的な部分が評価項目となります。
保護者に質の高い教育サービスであると認識していただくためには、先生方それぞれが日頃から保護者としっかり向き合っておくという姿勢が重要になってきます。
そのためには色々な手法があります。一例だけを示しておきますので、それぞれの先生に合った方法があれば採用してみて下さい。
<会報>
SNSを活用してという方法が主流ですが、この時代あえてアナログ印刷で発行すると隅々まで読んでいただけます。
教室での日々の出来事や、行事予定のほか、先生の考えをコラム風にまとめてみることもおススメいたします。
ただしアナログ印刷物は教室外の保護者には届きません。PDF化したものをサイトに掲載したり、教室前で手に取ってもらえるようなひと工夫が必要ではあります。
<発表会>
ピアノやダンス教室、英会話スクールでは盛んにおこなわれています。
制作したプログラミング作品を生徒自らがプレゼンテーションを行い、保護者の皆さまに見てもらうというのも楽しいですね。
<保護者面談/三者面談>
学習塾などではよく採用されている手法です。
学習内容や教室での過ごしている様子などを対面で話し合う場を設けてみることもいいことです。
<学習報告>
定期的に何かイベントを行うのが困難な場合は、月に一度程度でもよいので、子どもの学習の様子を小まめに保護者にお伝えすることでも良いと思います。
方法は何でも構いません。メール/LINEメッセージ/LINE通話/お手紙など、教室に合った方法をご検討ください。
先生方のやりやすい方法で構いませんので、保護者との定期的なコミュニケーションは必ず行ってください。
【退会抑止策4】 制度の整備
生徒が退会したいという理由は様々です。
①プログラミング学習が面白くなくなった
②他のプログラミング教室に移ることになった
③他の習いごとを優先することにした
④忙しくて通えなくなった
①②③などは、ここまで書いた抑止策を徹底し、プログラミングを学ぶ価値を知っていただくことで、その確率を下げることはできるかも知れません。
しかし④のコントロールはとても困難です。
特に小6生の中学受験、中3生の高校受験、高3生の大学受験など、進学関係のことを優先させたいという希望は必ず発生いたします。また中学校・高校では、部活動との両立に悩む生徒からの相談も増えてきます。
その場合には、
「取りあえず一定の期間だけ休みたいのか?」
あるいは、「もう教室に戻ってくる気はないのか?」
そのいずれの考えなのかを落ち着いてお聞きしておきたいものです。
もし一定の期間だけの通学を中断したいという場合には、
「復学制度」=通学を再開するときに入学金を徴収しない
「休学制度」=休学中断中の月謝徴収を行わない(あるいは手数料として微々たる金額を徴収)
こういった制度を用意しご提案することにより、再び生徒に教室に戻ってきてもらえる可能性が高まります。
【最後に】
このコラムの本題とは少し話が逸れますが、関連してもう一点だけ書かせていただきたいことがあります。
退会率が増えてきた場合、特に近隣他教室への流出が増えた場合に、価格競争で活路を見出そうとするケースが多々見受けられます。
例えば月謝価格を引き下げた場合、地域で築いたブランド価値を棄損するという恐れがありますし、既存顧客からの信用が低下する可能性もあります。
また初期費用割引(入学金割引、教材費割引など)の無計画な導入は、それがいつの間にか恒常化してしまい二重価格表示の違反に繋がっていくケースもあります。
顧客(保護者や生徒)への質の高いサービスを維持し、サービスの受益者に価値に見合ったご負担を求めていくことを基本姿勢にしていただければと考えております。
今回のコラムは以上でございます。ご精読いただきましてありがとうございました。