教材経営

開講するならどっち、ロボット教室それともプログラミング教室?

開講するならどっち、ロボット教室それともプログラミング教室?

これからプログラミングコースを開講しようと考えている経営者は、よく悩む問題だと思います。それぞれの特徴を抑えて判断する必要があります。

現在街に出ると、多くのプログラミング教室が見かけられます。その多くがロボット教室です。
個人で正確な統計をとったことはありませんが、感覚的に8割がロボット教室で、残りの2割がプログラミング教室です。
なぜ多くの教室がロボットを選ぶのでしょうか?
あなたが開講するときは、どちらにするべきでしょうか?一緒に考えてみましょう。

まず、ロボット教室のメリットとデメリット

ロボット授業は、もちろんロボットキットを使い、専用ソフトを使ってプログラミングし、ロボットを動かす授業となります。

8割の教室がロボット授業を選ぶ理由を考えてみました。

理由1 響きがいい、見栄えがいい
理由2 低学年から集客できるので生徒の幅が広い
理由3 ロボットのメーカーからキットから教材まですべて提供してくれるので楽
理由4 あまりプログラミングが詳しくない先生も教えられる

他の理由もあるかもしれませんが、私はこの4つが大きな決め手だと思います。
「ロボット」という言葉の響きがいいですね。ロボットを見れば、子どもはワクワクします。保護者は授業内容をなんとなく想像でき、納得しやすいです。ロボットキットを使うので、直感的な学びができます。そのため、初めてプログラミングを学ぶ子どもや低学年の子どもには、ハードルが低いです。幼稚園の年長さんから始められるキットもあります。
さらに、運営側からみると、メーカーがすべての教材を用意してくれるので、自分でカリキュラムを構築する手間が不要で、楽です。紙ベースの教材がすべてあるので、生徒に配れば授業できますので、プログラミングがあまり詳しくない学生アルバイトも講師として入れやすいです。

では、この4つの理由から見えてくるマイナス点を説明します。

一番のマイナスポイントは、競合が激しいことです。

例えば、3・4年前、まだロボット教室が多くなかった頃ですが、当時開講するなら、ロボット教室はいい選択肢だったと思います。しかし、現在全国1万2千以上のプログラミング教室があるなか、ロボット教室の開講は慎重に検討する必要があります。自分の開講地域の状況をよく調べないといけません。周りにロボット教室がほとんどない場合には勝機があると判断できますが、そうでない場合やはり競争で勝つことは厳しいと思います。

次のマイナスポイントは、ロボット授業の内容そのものです。キットが高価です。

現在、多くのロボット教室では、レゴのEV3やWeDoか、Artecロボット、KOOVロボット、ヒューマンアカデミーロボットなどを使っています。どれも安くはないです。入会に躊躇する保護者も多いです。どのロボットを使っても教育目標は同じです。プログラミングの基本概念を理解し、試行錯誤による学習、さらにチームワークによるコミュニケーション力の向上となります。しかし、ロボットメーカーから用意されているカリキュラムや教材に組まれている多くの課題は、モーターの回転とセンサーの感知によるロボットプログラミングです。そのため、多くの課題にほぼ同じようなプログラムが多いです。ロボットのプログラム自体がシンプルで、決まっている命令を繰り返して使うのがほとんどなので、初心者にはすごくいいです。しかし、中高生には飽きやすい問題があります。またプログラムの多様性が少ない分、考えられる間違いの範囲が狭いです。試行錯誤しても、ロボットを使わないプログラミング授業ほど、学習できる技術的な分量は多くはありません。

もう一つのマイナスポイントは、教える講師です。

あまりプログラミングに詳しくない方も教えることができますので、運営側としては講師の確保がしやすいです。しかし、長い目でみると、安定した教室運営に大きなリスクがあります。やはり、最終的に生徒は教室を選ぶより、教える講師を選びます。講師がよく変わると、生徒の退会率が高くなります。安定運営できた教室には、しっかり教える講師がいるからです。とりあえずアルバイトの先生を入れるのではなく、本格的にプログラミングを教えられる講師の育成を考えている教室こそ、これからの時代に勝つのではないでしょうか。

つぎに、ロボットを使わないプログラミング教室のメリットとデメリット

プログラミング授業では、基本パソコンだけで、プログラミング学習ソフトを使ってゲームやアニメーションを作ります。現在プログラミング学習ソフトはScratchなどのビジュアルプログラミングソフトとテキストプログラミングソフトがあります。ビジュアルプログラミングソフトはブロックを組み立てて、プログラムを作ります。

ロボットを使わないプログラミング授業を選んだ理由も考えました。

理由1 生徒からみると、ロボットキット代が不要なので初期費用が安い
理由2 ビジュアルプログラミングなら、初心者や低学年の子どもも始められる
理由3 授業内容の幅が広い(入門から上級まで)
理由4 資格や大学入試など対応できる

生徒を長く在籍させることができるのが、このロボットを使わないプログラミング教室だと思います。
初心者や小学校低学年の子どもには、積み木のようにプログラムの命令ブロックを移動して、プログラムを組み立てます。プログラミングの基礎学びに集中でき、学びの効率が良いと考えます。
2年間基礎を固めたら、テキストプログラミングに移ることができます。より本格的な学びができます。使えるソフトはいろいろありますが、私の塾ではSublime Textという無料ソフトを使っています。使うプログラミング言語に合わせて、英語の命令の選択肢が表示され、選択するだけで入力できます。入力ミスを大幅に減らすことができます。小学校高学年の子どもから使えます。
さらに、中学生・高校生と学年が上がることに合わせて、他の言語も学んでもらうことができます。
2025年大学入試に情報科目が追加されます。本格的な学びだからこそ入試のための対策にもなります。実際の企業で使われている技術も学べます。

では、マイナス点も見てみましょう。

一番のマイナスポイントは、入会するとき保護者に学びの内容を説明しにくいことです。
特に、プログラミングがわからない保護者にどう伝えればいいか、工夫しなければなりません。

次のマイナスポイントは、募集生徒の年齢層です。学習内容にもよりますが、ロボット教室と比べて、募集生徒の年齢層がやや高いことです。
初めてプログラミングを学ぶ子どもには、基本ビジュアルプログラミングツールScratchを使います。命令ブロックを使ってプログラムを組み立てますが、やはり、小学校低学年の子どもにはまだハードルが高いです。マウスを使えない子もいます。なので、小学3年生か4年生から募集するのが一般的だと思います。
また、制作も結果確認もすべてパソコンの画面で行います。実物ではないので、低学年の子どもが難しく感じることが多いです。

もう一つマイナスポイントは、講師の確保です。入門クラスなら、プログラミング講師はまだ見つかりやすいですが、少しずつ進むと、講師自身のプログラミング技術が求められます。Scratchを教える講師なら、半年間の訓練があれば、ほとんど問題なく教えることができます。しかし、テキストプログラミングになると、それなりの技術を持っていない講師は教えることができません。もちろん、実際に教える内容はかなり基礎的な部分ですが、講師として深く理解していないと、生徒への指導が不安になります。ここで、教える講師の確保が大きな課題となります。

結局、自分はどっちを選ぶべきか?

結論からいうと、プログラミング教室とロボット教室の違いを理解し、自分の地域の教室状況を確認し、自分の教室の特徴を踏まえて判断することになります。場合によっては両方取り入れることも可能です。

募集対象が幼稚園児や小学校低学年の子どもなら、ロボット教室は決して悪い選択ではないと思います。プログラミングの最低限の基本概念を直感的に学べる、かつロボットという物理的なものがありますので、子どもたちの興味が得られやすいです。

しかし、小学校高学年からの子どもなら、ゲーム制作のビジュアルプログラミングからはじめ、徐々に本格的なテキストプログラミングを学べる教室がいいと思います。ロボットに興味を持っているなら、テキストプログラミングを学んでからでもできます。

皆さんは、自分の教室が他の教室との違い(強み)を見つけ、教室の将来性を考えながらご判断ください。なかなか決められない場合は、ぜひご相談ください。こどもICT教育支援センターは、皆さんのプログラミング教室運営にお役に立てればと考えております。

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中山 涼一

こどもICT教育支援センター センター長

2014年に関西初のこども向けプログラミング教室「未来学校プログラミング教室」を創設。800名以上の指導実績を誇るプログラミング教育のスペシャリスト。

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