「教室規約」は整備されていますか?
「教室規約」は整備されていますか?
教室を新規開業する際には様々な準備が必要となります。
その準備の過程において、受講生向けの規約をどのように作成するのかということも、先生方からよくご質問をいただく事項となります。
このコラムでは、教室規約の作成に際して意識しておきたい重要ポイントを、簡単に解説したいと思います。
受講料支払いのトラブルに備えておくこと
教育サービスにおいては、利用者が購買するサービスが無形のものであるが故に、その商品価値が理解されづらいという一面があります。
また、サービスの提供とその提供対価の受領にタイムラグが発生することが多いので、金銭面でのトラブルが起こりがちです。
☆滞納した受講料を支払わないまま、生徒が退会してしまった
☆期間途中の退会において、すでに受領済みの受講料の返還を求められてしまった
☆教育成果に満足できない保護者が、受講料を納入してくれない
これらが顕著な事例ですが、他にも様々なトラブルの発生が想定されます。
規定において、受講料の納入義務のルールや、退会時の規定を明確に記しておくことが大切です。
また、こういった金銭トラブルに対する法的知識について、先生方も学んでおかれる必要があります。
アクシデントに備えておくこと
教育サービスにおいては、教室側が考えている責任の範囲と、利用者様(子ども向け教室の場合は、主に保護者様)が考える責任の範囲が相違する場合も多々あります。
特に不慮のアクシデントが発生した場合などに、その相違が浮き彫りになりがちです。
☆教室で子どもたちがケガしてしまった場合
☆教室で子どもたちが設備や備品を破損してしまった場合
☆授業に必要な教材を家に忘れてきて、十分に授業を受けられなかった場合
☆教室での子どもの授業態度が悪く、先生から厳しい指導を受けてしまった場合
こういった場合、常識的に生徒側に非があると認められるケースにおいても、教室側の指導の至らなさや監督の不十分さを糾弾する保護者がいらっしゃいます。
責任の所在を冷静に考えつつ、度を越した理不尽なクレーム等に対しては毅然と対処したいものです。
一方的な非難に対して正しく対応するためには、教室で起こり得るいくつかのアクシデントをあらかじめ想定し、その場合の責任範囲を規定に記しておくことが大切です。
公平性を維持すること
教室の経営規模が大きくなればなるほど、「同一の料金」=「同一の授業時間」「均質の役務提供」という指針を、全生徒に対して貫徹することが大切になってきます。
どんなお教室でも、開業当初はまだ生徒数も少なく、授業時間や役務提供の範囲が曖昧になりがちです。
生徒一人一人に対して目が行き届きますので、時には所定の時間数や月謝金額の範囲を超えて、手厚い指導を行うこともあるでしょう。
しかし生徒数が増えることに比例して、すべての子どもたちにこのような柔軟な対応を行うことが困難になってきます。
そして、生徒を大切にしたいという感情に任せて曖昧な運営を続けてしまった場合、
例えば生徒Aには一日間の無料補習を行ったけれど、生徒Bには半日分しか実施できなかった、といったようなバラつきが随所で起こり始めます。
この場合、先生側にとっては「わずか半日の差」なのかも知れませんが、生徒Bやその保護者には大きな差を感じてしまうものです。
「生徒のために」と思い先生が熱心に行動したことが、時には別の子どもからの不満・不信に繋がることがあるのです。
そしてお客さまが一度抱かれた教室運営への不公平感は、消えるまでにも時間がかかります。そして最悪の場合、退会に結び付くこともあるでしょう。
そういった事態を防止するために、教室規約や料金表などを通じて教育サービスの提供内容を明記し、先生方もその基準に沿って指導を進めていく必要があります。
私自身も教室運営経験が長年あります。ですので生徒が可愛いが故に過剰なサービスを提供したくなる先生の心情は、十分すぎるほど理解ができます。
しかし健全経営を維持するためには、こういった感情を抑制し、秩序ある行動を取ることも必要となります。
生徒の学習継続を応援すること
教室の開業にあたっては、どのお教室でも、地域の子どもたちが通いやすい時間帯や価格を十分に検討して運営計画を立てられることでしょう。
しかしそういった配慮をいくら行ったとしても、通学当初に計画していた授業に出席できなくなる子どもたちが発生してしまいます。
☆部活動との両立が難しく、休みがちになる
☆他の習いごととの両立が難しく、休みがちになる
☆健康状態に不安があり、休みがちになる
☆学習への興味が薄れてきて、休みがちになる
計画通りの通学ができなくなった子どもたちの挫折を防ぎ、学習の継続を応援することも、規約を作成する際には意識しておきましょう。
そのために、子どもたちが学習をできる限り続けられるようなルールを明文化して盛り込んでおきたいものです。
「休会制度」
→ 月単位で一時休会ができる制度
「振替制度」
→ 通えなかった授業を別曜日に変更できる制度
「復学制度」
→ 退会した生徒でも、退会後の一定期間は入会金無しで復学できる制度
このような制度を決めておくことで、退会率が減少するという経営的メリットも生まれます。
学習成果に関する考え方
保護者が期待している学習成果と、子どもたちの実際の学習成果に乖離が生じた場合にも、トラブルは起こりがちです。
こういった場合には「責任折半」という割り切った考えを教室側が持っておくことも必要となります。
いくら先生方が熱心でも、生徒の意欲の欠如や適性の不一致などに起因して、十分な学習成果が得られないこともあります。
また逆に、生徒がいくら熱心でも、大変残念ながら先生方の指導力不足により学習成果を上げられないということもあります。
もちろん先生方には、プロとして日々努力を怠らず、自らの指導力を高めていただきたいと願ってはいます。
しかしながら、いくら先生方が努力をしても、子どもたち全員の学習成果を向上させることは現実的には不可能です。
また、先生も生徒も生身の人間ですから、必然的に相性が「合う」「合わない」といった別の問題も発生します。
相性の良さが学習成果の向上に寄与することもありますが、逆のケースも起こり得ます。
生徒が十分な学習成果を得られなかった場合に、その正確な要因や責任の在り処を特定することは不可能です。
教室の運営体制、先生の指導力、そして生徒の学習への取り組み方、それぞれの複合的な要素が絡み合うことで結果が現れているからです。
「責任折半」とは、そういった現実を言い表した言葉です。
この「責任折半」という概念については、教室側・先生側の無責任さと誤解されてしまう恐れもあります。
それが故に教室規約等に明文化しづらい事項ではあります。
しかし、少なくとも学習成果の向上を必ずしも保証するかのような条項を規約に書くことだけは避けておきたいものです。
また広報ツール等にて、学習成果を保証するかのような無責任なPRを記載することも、教育事業者としては避けておきたい行為です。
最後に
当センターの開業ご支援サービスをご利用いただくお教室様には、受講規約の作成サポートや、サンプルデータのご提供も行っております。
どうぞ遠慮なくお声かけ下さいませ。