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生成AI全盛時代のプログラミング教室運営

生成AI全盛時代のプログラミング教室運営

生成AIの進化によって、プログラムのコードを自動で生成する場面が増えてきました。
簡易なWebサイトやアプリの制作であれば、これまでよりも短時間で形になるケースも多くなっています。

こうした変化を、日々の教育現場で実感している先生方も多いのではないでしょうか。
また、生成AIを使い始めた保護者の方からも、
「これからはAIがコードを書いてくれるのだから、プログラミングを習わなくてもよいのではないか?」
といったような質問を受ける機会が増えていくはずです。

こうした時代だからこそ、プログラミング教育の役割や意義を、先生方ご自身があらためて整理し、理解しておくことが重要になります。

旧来の習いごとの現状

プログラミング教育の価値を考える前に、まず一緒に考察しておきたいことがあります。

こどもの習いごと教室ランキングにおいて、「そろばん」「書道」といった習いごとが、常に上位に挙げられていることに注目してみたいと思います。
今の時代においても、このような伝統的な習いごとが高い人気を保っているのは何故なのでしょう?

表計算ソフトや電卓が当たり前に使える時代に、なぜ「そろばん」が学ばれ続けているのか。
ワープロソフトや印刷が普及した今、なぜ「書道」が学ばれ続けているのか。

これらの習いごとが支持され続けている理由は、成果を効率よく得ることそのものよりも、結果に至るまでの思考や試行錯誤のプロセスに価値があると、多くの保護者が感じているからではないでしょうか。

また、時間をかけて一つのことに向き合い続ける経験が、子どもの粘り強さや集中力を育てる点も、重要な評価ポイントになっていると考えられます。

道具がいくら便利になっても、「考えるプロセス」や「考えようとする意欲」そのものを省略することはできません。
これは、生成AI時代のプログラミング教育においても、変わらず重視されるべき本質ではないでしょうか。

【参考資料】
学研教育総合研究所 「小学生白書 2024」習い事ランキング
https://www.gakken.jp/kyouikusouken/whitepaper/202411/chapter7/01.html
ベネッセコーポレーション 「小学生の習い事調査 2024」
https://benesse.jp/kosodate/202403/20240329-1.html

人間と生成AIの役割分担

生成AIが普及した現在のプログラミング環境では、システム構築の進め方そのものが変化しています。
ここでは、一般的な作業の流れを分解して整理してみましょう。

システム構築の基本的な流れ

① 考えて伝える(人)
目的や条件を整理し、設計として言語化する。

② コードを書く(生成AI)
人の意図をもとに、コードを生成する。

③ 結果を確認・調整する(人)
生成されたコードを確認し、必要に応じて修正を行う。

このように、工程ごとに「人」と「生成AI」が役割を分担して作業を進めるケースが、今後さらに増えていくと考えられます。

「人」に求められる役割とは

「人」が担うべき役割は、上記のうち①と③の工程です。

①の「考えて伝える」工程では、生成AIが正しく作業できるよう、目的や条件を明確に指示する必要があります。
指示が曖昧だったり、一度に多くの要求を詰め込みすぎたりすると、生成AIは意図を正確に理解できません。その結果、やり直しや追加指示が増えてしまいます。
こうした事態に陥らないためには、「自分がコードを書くとしたら、どのような順番で取り組んでいくのか?」と想定しながら指示を出すことが重要になります。
プログラミング言語の基礎知識や制作経験は、こうした場面で大きな助けとなります。

②の工程では、生成AIがコードを生成します。ここは生成AIが最も力を発揮する部分です。

③の「結果を確認・調整する」工程では、生成されたコードが意図通りに動作しているか、実際に使えるかを人が判断します。思った通りの結果にならない場合は、人がコードを読み、問題点を特定し、修正を行う必要があります。

【実例】
生成AIを活用したJavaScript開発

前章で整理した「人」と「生成AI」の役割分担を、より具体的な例で確認してみましょう。
ここでは、JavaScriptを使って「ToDoリスト」のWebアプリを開発する場面を想定してみます。

①考えて伝える(人)

まず最初に人が行うのは、「何を作るのか」を整理し、それを生成AIに伝えることです。
「ToDoリスト」の画面構成や操作内容、どこまでの機能を実装するのかを言葉にして伝えなければ、生成AIは意図を正確にくみ取れません。

最低でも、以下のような指示が必要となります

・画面には「入力欄」「追加ボタン」「タスク一覧」を表示する
・追加すると一覧の末尾に表示される
・各タスクには「完了チェック」と「削除ボタン」を付ける
・完了したタスクは打ち消し線(または薄い表示)にする
・データはブラウザを閉じても保存しておく(または保存しない)

またレイアウトや構成に関して、HTMLやCSSの指示も合わせて必要となります

・背景色は●●に
・タイトルは「●●●」に
・行間は●●●px
・フォントのサイズは●●●px

この最初の指示が、その後の作業全体の効率を大きく左右します。
「自分がJavaScriptで実装するとしたら、どのような順番で構築するか」を想像しながら、分割して指示をしていくことが、この工程では重要になります。

②コードを書く(生成AI)

設計や条件が整理されると、生成AIはそれをもとにJavaScriptのコードを生成します。
HTML構造や各処理をまとめて提示できるのは、生成AIが最も力を発揮する部分です。

ただし、この段階で得られるのは、あくまで「動きそうなコード」です。
完成形かどうかを判断する工程までは、生成AIは担えません。

③結果を確認・調整する(人)

生成されたコードは、人が実際に動かして確認する必要があります。
期待した機能がすべて正確に動くケースは大変少なく、どの動作に問題があるのかを見極めながら、細かな修正を加える作業に移行していきます。

この工程では、コードを「書く力」だけでなく、「読む力」「判断する力」が重要になります。
プログラミング知識を持つ人が点検を行うことで、効率的に問題点を特定し、改善につなげることができます。

もしこの工程を、プログラミング知識を持たない人が担った場合、うまく動作しない要因の特定ができません。
何度も①からリスタートする必要が生じ、完成に近づくことができずループし続けることも予想されます。

「プログラミング教育」の意味

こうして工程を分解して考えると、生成AIが担えるのは②の「コードを書く」工程に限られることが改めて理解できます。
生成AIは「それらしい答え」を提示することはできますが、その内容が本当に適切か、意図通りか、実用に耐えるかどうかを判断することはできません。

だからこそ、①の「考えて伝える力」と③の「確認し、修正する力」は、今後も人が担い続ける重要な役割となります。
プログラミング教育は、単にコードを書くための学習ではなく、こうした役割を果たすための思考力や判断力の基礎を育てるものだと言えるでしょう。

保護者に伝えておきたいこと

繰り返しになりますが。
生成AIは、正解、あるいは正解に近い回答を提示することはできます。
しかし、自らが「何をしたいのか」という意思を持つことや、「失敗してしまった」と自動的に察知し修正する能力は持っていません。

また、生成AIが社会の規範やマナーを必ずしも理解しているわけではありません。
システムが社会にとって望ましくない方向へ進まないよう監視し、判断するのも、人が担う重要な役割です。

プログラミング知識や社会規範、そして粘り強く考える姿勢を身につけた人と、思考スピードが著しく速い生成AIが協働してこそ、社会の役に立つ有益なシステムを構築することが可能になります。
そのような協働ができる人材を育てることこそが、プログラミング教室の使命だと言えるでしょう。

「人の仕事がなくなる」
「人の存在意義が薄れる」
そんな不安が語られることもありますが、それは生成AIの特性を正しく理解していないことで生まれる誤解です。
保護者の皆さまにも、こうした点を丁寧に説明できるよう、先生自らが考えを整理しておくことが重要です。

おわりに

人が設計し、生成AIがコードを生成し、そしてまた人が確認・調整する。
この役割分担がある程度確立されてきたことで、プログラミング教育において学ぶべきことも、より明確化してきたのではないでしょうか?

文中にて紹介したように、旧来の習いごとが今なお支持され続けている背景には、「考えるプロセス」や「考えようとする意欲」そのものに価値がある、という共通した認識があります。
生成AI時代のプログラミング教育も、本質的には同じ構造の上に成り立っています。
コードを効率よく生成することではなく、何を作るのかを考え、試行錯誤し、結果を見て考え直す。その一連のプロセスこそが、学びの中心となってきます。

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進藤 整是

こどもICT教育支援センター 開業・運営コーディネーター

国内最大級の福祉系資格スクール経営経験20年。講座企画・募集営業・広報・IT化推進・総務などスクール経営の中核業務に精通したスペシャリスト。

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