「先生」と呼ばれること(続き)

「先生」と呼ばれること(続き)

前回のコラムをもう少し掘り下げたいと思います。
「傲慢な先生」にならないために、先生方に認識していただきたいことを、私なりにまとめてみました。

「こどものスキルが伸びない」というケースでの思考

・生徒の努力に問題がある。
・生徒の能力に問題がある。

生徒のスキルが伸びないことに対して、このような責任転嫁ばかりをしていないでしょうか?
生徒の技能が伸びないのは、実は先生の努力不足に起因していることも多々あります。

・個々の生徒の力を引き出せる指導方法ができているか?
・個々の生徒の現状に見合った課題を与えられているか?

責任転嫁をしそうになった時、それらの点も謙虚に考えてみませんか?

プロスポーツの世界では選手の力を引き出せない指導者は失格とされます。
教育の世界も同じです。受講料をいただいている以上は、先生はプロです。
生徒のせいばかりではなく、同時に自身の指導方法も見直す謙虚さを持っていただければ嬉しいです。

「こどもが授業を聞いてくれない」というケースでの思考

こういったシーンでも、

・落ち着きのない生徒が最近は多い。
・あの生徒はそもそも不真面目である。

そんな風に生徒側に責任転嫁をしてしまいがちです。
でも実のところ、先生の授業のシナリオやコミュニケーションスキルを改善すれば、解決できることもあるかも知れません。

・生徒を惹きつける話術の基本ができているのか?
・授業のシナリオは生徒が楽しめるものなのか?
・そもそも先生ご自身がしっかりと研究をして、授業を楽しめているのか?

売れっ子のタレントは、お客さまを惹きつける振る舞いやトークができます。
先生もプロです。生徒が授業に夢中になれる振る舞いやトークができているのかな?
そういった謙虚な振り返りも必要だと思います。

偶然かも知れませんが・・・
私の周囲の人気講師は、落語が大好きな方が多いのです。
落語家は、顔の表情、振り、話し方などの細かい技芸でお客さまを惹きつけます。
そこから自然に学び、授業に活かせることも多いのかも知れませんよね。

「こどもが指示を聞いてくれない」というケースでの思考

なぜ指示したとおりに行動をしてくれないのか?
ずばり、それは先生の指示した通りに行動することへの意義を、生徒たちが感じていないからです。

先生が「自分の言った通りにすると生徒は成長するのだ」と自己の正義感を押し付けようとした場合、このような反発が起こりがちです。

そもそも、先生とそれぞれの生徒とでは、生活している環境・生活してきた環境(家族関係・地域環境・教育環境・時代背景・健康状況・心理状況・経済状況などなど)がすべて異なります。
ですので、思考方法や価値観も必然的に異なります。

先生なりの「こうやったらうまくいくのだ」という成功の法則は、極端な話ですがその先生ご自身にしか通用しないノウハウかもしれません。

一つのプログラミングを完成させる場合にも同じです。ゴールに至るまでの組み立て方は人それぞれです。
「どれが理想」というものはある程度はありますが、「どれが正解」というものはありません。
ましてや、先生の思考順序だけが唯一の正解だということは、決して有り得ないと思うのです。

先生の成功体験を、一方的に生徒に押し付けようとしても、それは生徒にとって重荷にしかなりません。
先生の正義感を押し付けることではなく、まずは生徒個々の考えをアウトプットさせることに力を注いでいただきたいと思います。

生徒が先生と違うアイデアを持っていた時には、まずは「すごいね!」とそのことを一緒に喜んでみてはいかがでしょうか。
そしてなぜその思考に至ったのかを丁寧に聞き出し、ディスカッションを行い、必要性を感じれば最低限のアドバイスを行う。
そういう指導方法が理想だと私は思うのです。

生徒への「暴言・体罰・無視・威圧 ・・・」はなぜ起こる?

「こうやったらうまくいくのだ」という指示やアドバイスに対して生徒が興味を示さない場合、先生の問題行動が起こりがちです。

先生の立場からすれば、生徒に大いに愛情を注いでいるつもりでしょう。
その注いだ愛情が大きければ大きいほど、生徒に歓迎されない状況が起こるとパニックになりがちです。
時には激情に駆られ問題行動にまで発展してしまうことがあります。

そうならないためにも、(先述の繰り返しですが)先生と生徒の思考や価値観は違って当たり前なのだということを、冷静に認識しておきましょう。

先生の指示やアドバイスが、その生徒にとっては理想でなかったり、理解ができなかったりすることもあります。いや、むしろそれが当たり前なのだと思います。

先生が生徒の思考をしっかりと受容し、寛容になることが大事だと思います。

最後に

生徒の成績やスキルが思ったように伸びない場合、「先生の責任が半分」「生徒の責任が半分」だと私は考えています。

先生は生徒だけに責任を転嫁せずしっかり努力する。そして生徒も自身の成長のためにしっかり努力する。
そのように「お互いが頑張る」、そういう雰囲気のお教室を作っていただければ嬉しいです。

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進藤 整是

こどもICT教育支援センター 運営会社代表

国内最大級の福祉系資格スクール経営経験20年。講座企画・募集営業・広報・IT化推進・総務などスクール経営の中核業務に精通したスペシャリスト。

プロフィール