プログラミング教室の「立地条件」について考える
プログラミング教室の「立地条件」について考える
プログラミング教室を開業する際、教室をどこで開くかはとても大切な検討事項です。
- 駅前の物件がいいのか?
- 住宅地に近い場所がいいのか?
- 学校の近くがいいのか?
- 商業施設の中がいいのか?
開業前の段階では、判断に迷われる方も多いのではないでしょうか。
一般的に「立地が良い」と聞くと、人通りが多い場所や駅から近い場所を思い浮かべるかもしれません。
しかし、子ども向けのプログラミング教室の場合、飲食店や小売店のように、通りがかった人がその場で立ち寄り、入会を決めるようなケースはあまり想定しなくてよいでしょう。
保護者は、事前にインターネットで情報を調べ、教室の内容や料金、通いやすさ、講師の雰囲気などを比較したうえで、体験授業への参加を検討します。
つまり、プログラミング教室における立地は、単に「目立つ場所にあるか」だけで判断するものではありません。
「誰に通ってもらう教室か」の条件整理
立地を考える前に、まず明確にしておきたいのは、どのような生徒を対象にするのかという点です。
小学生を中心にするのか、中学生以上も対象にするのか。近隣の子どもたちに通ってもらうのか、少し広い範囲から来てもらうのか。
対象とする生徒像によって、適した立地は変わります。
小学生中心か、中学生以上も対象にするか
小学生を中心にする場合は、子どもが一人で通える範囲や、保護者が送迎しやすい範囲を考える必要があります。
特に低学年を対象にする場合、保護者の送迎が前提になることも多いでしょう。
一方で、中学生以上を対象にする場合は、駅からの近さや公共交通機関での通いやすさが重要になることがあります。
部活動や学校帰りに通う生徒を想定するなら、駅やバス停からの距離も判断材料になります。
平日夕方か、土日中心か
授業を行う曜日や時間帯によっても、適した場所は変わります。
平日夕方に開講する場合は、学校帰りや保護者の送迎を想定する必要があります。
土日中心であれば、保護者が車で送迎しやすい場所であることに加え、買い物のついでに立ち寄れる場所が候補になるかもしれません。
ここが曖昧なまま物件を探すと、「駅前で目立つから良さそう」「学校に近いから良さそう」といった表面的な条件に引っ張られやすくなります。
まずは、自分の教室に通う生徒と保護者の行動を具体的に想像することが大切です。
立地条件ごとの特徴と注意点
立地にはそれぞれ特徴があります。
どこが正解ということではなく、教室の対象や運営方法に合っているかで判断する必要があります。
駅とその近隣
駅前の物件は、場所を説明しやすく、遠方からも通いやすいというメリットがあります。
看板を出せる場合には、教室の認知にもつながります。中学生以上や、電車・バスで通う生徒を想定する場合には有利です。
一方で、家賃が高くなりやすく、駐輪場や送迎スペースを確保しにくいことがあります。
小学生中心の教室では、駅から近いことよりも、保護者が送り迎えしやすいことの方が重要になる場合もあります。
学校の近隣
学校の近くは、子ども向け教室として分かりやすい立地です。
保護者に場所を説明しやすく、「地域の子どもたちが通う教室」という印象も持ってもらいやすくなります。
ただし、学校の近くにあるからといって、必ずしも通いやすいとは限りません。
小学生の場合、習いごとには帰宅後に保護者の送迎で通うケースも多いため、学校からの距離だけでなく、自宅から通いやすいか、保護者が送り迎えしやすいかも重要になります。
学校に近いことはメリットの一つですが、それだけで立地を決めるのは危険です。
実際に通う子どもと保護者の動きを想定し、「学校から近い」ことが本当に通いやすさにつながるかを確認しましょう。
住宅地
住宅地に近い場所は、地域の子どもたちが継続して通いやすいというメリットがあります。
徒歩や自転車で通える距離に生徒がいる場合、保護者の負担も小さくなります。
一方で、場所が目立ちにくかったり、自治会等のルールや地域の取り決めにより、看板を出しにくいことがあります。
また、地域外から多くの保護者や生徒が出入りすることを好ましく思わない地域もあります。
こういった環境面や条件についても調査が必要です。
商業施設とその近隣
商業施設の中や近くにある教室は、保護者が買い物のついでに送迎しやすいというメリットがあります。
駐車場を利用できる場合もあり、初めて来る方にも案内しやすいでしょう。
ただし、施設の営業時間、利用ルール、看板の出し方、教室の開催曜日などに制約がある場合があります。
また、施設内の人通りが多いことが、必ずしも入会につながるとは限りません。
入居前のチェックポイント(建物周辺や共用部分について)
物件内部のチェック
保護者は、教室の中だけでなく、建物に入ってから教室に着くまでの雰囲気も見ています。
建物の入口が暗い、階段や廊下が分かりにくい、清潔感がない、周辺の交通量が多い、といった不安要素があると、体験授業や入会をためらう理由になります。
確認したいポイントは、次のような点についてです。
- 建物の入口が分かりやすいか
- 夜間でも周辺が明るいか
- 交通量が多すぎず、安全に出入りできるか
- 同じ建物内のテナントに不安要素がないか
- 初めて来る保護者にも案内しやすいか
- エレベーターや階段、共用部分が清潔に保たれているか
実際の授業時間帯に確認する
物件は、昼間に内見したときと、実際に授業を行う時間帯とで印象が変わることがあります。
昼間は問題がないように見えても、夕方には交通量が増えたり、夜になると人通りが少なくなったりすることがあります。
可能であれば、平日の夕方や土日の開講予定時間に現地を歩いてみることをおすすめします。
開業後の様子を具体的に想像しやすくなります。
入居前のチェックポイント(教室について)
教室内部のチェック
内見時には、単に広さを見るのではなく、実際に授業を行う様子を想像して確認しましょう。
- 机と椅子を置いたときに、生徒が窮屈にならないか
- 電源の位置や数に問題がないか
- 体験授業や保護者説明のスペースを確保できるか
- 外部からの騒音がないか
ネットワーク環境
プログラミング授業を行うからには、インターネット回線がどのように確保できるのかは重要なポイントです。
今後、AI活用や映像制作などの分野にカリキュラムを展開されていく場合には、それなりの高速回線が引き込めるかどうかも重要となってきます。
またインターネット回線だけではなく、生徒が利用するスマホへのモバイル通信環境も確保しておく必要があります。
保護者と生徒との相互の連絡は、ほぼLINEなどで行われます。
主要キャリアの電波がきちんと教室内に届くかどうかも確認しておきましょう。電波が届かない場合は、保護者の不安が大きくなる可能性があります。
物件の広さ
開業時の規模と、少し生徒が増えたときの両方を想定して選ぶことが大切です。
生徒が学習できる場に加えて、講師の作業スペースや備品の収納スペースなども必要です。
机のレイアウトにもよりますが、学習スペースについては、最低でも生徒2名につき1坪程度の広さは確保しておきたいものです。
また部屋の形状の確認も大切です。細長い部屋や柱の多い部屋では、デッドスペースも生じるため、広めの面積が必要となります。
送迎・駐輪・入退室についてのチェックポイント
プログラミング教室では、授業開始前と終了後に人の動きが集中します。
生徒が来る時間、保護者が迎えに来る時間、次の授業の生徒が来る時間が重なると、入口や駐輪場が混雑することがあります。
送迎時の一時駐車
小学生向けの教室では、保護者の送迎が多くなります。
車で送迎する地域であれば、一時的に停車できる場所があるかを確認しておきましょう。
駐車場がなくても、教室の前や周辺で、短時間の乗り降りが安全にできるかどうかは重要です。
近隣の店舗や住民に迷惑がかからないかも確認が必要です。
送迎時の車の停め方が問題になると、開業後の運営に影響することがあります。
自転車通学時の駐輪
自転車で通う生徒が多い地域では、駐輪場の有無も重要です。
十分なスペースがない場合、歩道や建物前に自転車が並び、近隣への迷惑になる可能性があります。
入退室の経路
テナントビルの場合、入退室のタイミングが重なり、エレベーターや出入り口付近に生徒が一気に集中すれば、近隣への迷惑となります。
階段など複数経路での入退室が可能かなどもチェックが必要です。
また低層階への入居の場合には、生徒のエレベーター使用を禁止するなどの措置も考えましょう。
競合教室との関係性
立地を考える際には、周辺に競合となる教室があるかどうかも確認しておきたいポイントです。
近くにプログラミング教室やロボット教室、学習塾、英会話教室などが多い場所を見ると、「競争が激しそうだから避けた方がよいのでは」と感じるかもしれません。
反対に、競合が少ない地域を見ると、「まだ教室が少ないからチャンスがある」と考えることもあるでしょう。
しかし、競合が多い場所にも、少ない場所にも、それぞれメリットとデメリットがあります。
単に「競合が多いから悪い」「競合が少ないから良い」と判断するのではなく、その地域に習いごとの需要があるか、自分の教室の特徴を打ち出せるかを考えることが大切です。
競合が多い場所のメリットと注意点
競合が多い場所は、すでに子ども向けの習いごとに対する需要がある地域と考えることもできます。
学習塾や英会話教室、ロボット教室などが集まっているエリアは、保護者にとって「子どもを通わせる場所」として認識されている可能性があります。
また、保護者が複数の教室を比較しやすいため、体験授業の候補に入れてもらいやすい面もあります。
近くに似た教室があるからこそ、「プログラミング教室を探している家庭」の目に入りやすい場合もあります。
ロードサイドの特定のエリアに、ガソリンスタンドが複数並んでいる光景を見られたことがあると思います。
店舗の数が多いと、消費者心理は、「ガソリンを入れる/入れない」から、「どこの店でガソリンを入れようか?」というように変化することがあります。
教室選びにもこれと同じことが言えるでしょう。
いくつかの教室に問い合わせをして入会への説明を受けていると、「プログラミングを学ぶ/学ばない」から、「どこの教室でプログラミングを学ぼうか?」というように保護者の心理が変化していくことが期待できます。
ただし、競合が多い場所では、教室の違いを明確にする必要があります。
授業内容、対象年齢、料金、開講曜日、講師の対応、使用する教材などが似ていると、価格や場所だけで比較されやすくなります。
競合が多い場所を選ぶ場合は、次のような点を確認しておきましょう。
- 周辺の教室は何歳くらいを対象にしているか
- カリキュラムの差があるのか
- 月謝や授業回数はどのくらいか
- 平日夕方、土日など、どの時間帯に開講しているか
- 自分の教室ならではの特徴を打ち出せるか
競合が多い場所では、「近くに教室があるから不利」と考えるよりも、その地域の需要を確認しながら、自分の教室がどのような違いを出せるかを考えることが重要です。
競合が少ない場所のメリットと注意点
競合が少ない場所は、同じ地域で比較されにくいというメリットがあります。
近くにプログラミング教室が少なければ、地域の保護者にとって新しい選択肢になりやすく、うまく認知されれば優位に立てる可能性があります。
また、近隣に同種の教室が少ない場合、価格競争に巻き込まれにくいという面もあります。
地域で最初に認知を取ることができれば、長期的に安定した教室運営につながる可能性もあります。
一方で、競合が少ないということは、まだ需要が見えにくい地域である可能性もあります。
そもそも子ども向けの習いごとに通う家庭が少ない、プログラミング教育への関心が高くない、保護者が遠くの大きな教室に通わせる傾向がある、といった場合もあります。
競合が少ない場所を選ぶ場合は、次のような点を確認しておきましょう。
- 子どもの人口が十分にあるか
- 学習塾や他の習いごとは成り立っているか
- 保護者が習いごとに費用をかける地域か
- プログラミング教室の認知を広げるための広報手段があるか
競合が少ない場所は魅力的に見えますが、「競合がいない=需要がある」とは限りません。
なぜ「競合がいない」のかという事前分析が必要です。
まとめ
多くの業種において、店舗の立地条件というと、駅から近い、目立つ、人通りが多い、といった点に目が向きがちです。
もちろん、教室の物件選定においても、知ってもらいやすい場所であることは同じく大切なことではあります。
しかし、子ども向けのプログラミング教室では、それだけで物件を決めることはできません。
実際に通う子どもにとって無理がないか、保護者が安心して送り迎えできるか、授業前後の動線に問題がないかなど、さまざまな視点から考える必要があります。
立地選びに絶対の正解はありません。
ぜひ今回のコラムも参考にしていただきながら、ご自身の教室に合った場所を検討してみてください。
