教室運営における災害対策
教室運営における災害対策
近年、地震や台風、豪雨といった自然災害が各地で発生しています。先生方のお教室では、自然災害への備えは十分でしょうか。
教室オーナー様にヒアリングをしてみると、
・何となくやるべきことはイメージできている
・少しだけ備蓄もしてある
といった回答は得られるものの、残念ながら具体的な準備ができていないお教室様が大半であることを実感しています。
今回のコラムでは、「事前の備え」「発生時の行動」「運営の再開」という3つの段階に分けて、教室での災害対策について提言させていただきます。
参考にしていただき、運営実態に合わせたマニュアルを作成してみてください。
事前の備え
緊急連絡の準備
保護者に緊急連絡が行える体制を、常に整えておきましょう。
授業中の生徒は、まず教室側が安全を確保し、その後できるだけ早く家庭に連絡を行い、引き渡しに向けて連携していくという意識が必要です。
- 個別メール/メーリングリスト/LINE/電話など、複数の連絡手段を確保しておきましょう。
- 教室の電源喪失などに備え、業務用スマートフォン等のデバイスからも連絡先へアクセスできるようにしておきます。
- 保護者には、優先する連絡手段をあらかじめ伝えておきましょう。
⇒ 例) LINEが優先 → だめならメール → だめなら電話 など - 少なくとも3か月に1度程度はテスト配信を行い、確実に届くかを確認しておきます。
⇒ 保護者にも受信後の返信にご協力いただきます。
⇒ 不達があった連絡先は必ず更新しておきましょう。 - 災害時に慌てないよう、災害種別ごとの連絡文テンプレートを事前に用意しておきます。
避難の準備
沿岸部での津波警報、近隣火災による延焼の恐れ、河川の氾濫など、状況によっては教室からの緊急避難が必要となります。
こうした事態に備え、次の事項を確認しておきましょう。
- 最寄りの避難所を把握しておきましょう。(できれば複数)
- 避難経路は実際に歩いて確認しておきます。(できれば複数ルート)
- ハザードマップを確認し、浸水予測等を把握しておきます。
- これらの情報はスタッフ間で共有するとともに、保護者にも事前に伝えておきましょう。
教室内の安全確保
- 棚などの転倒防止対策を行っておきましょう。
- 机上機器についても、落下しないように工夫しておきます。
- 地震時の行動(机の下に潜る等)は、3か月に1度程度、生徒とともに訓練しておきます。
電源の確保と備蓄
食料・飲料水の枯渇、配電の途絶などに備え、最低でも3日間、できれば1週間の生命維持ができるような備えをしておきたいものです。
備蓄内容については、インターネット上の各種情報も参考にしながら整備していきましょう。
- 保存性の高い食品を準備しておきます。
⇒ 炭水化物(ご飯、カップ麺等)
⇒ タンパク質(缶詰、豆類等)
⇒ その他(フルーツ、お菓子等) - 飲料水は、1人当たり1日3リットルを目安に確保しておきましょう。
- モバイルバッテリーを必要台数準備しておきましょう。
- 情報収集手段として、電池式ラジオなどを用意しておきます。
- 業務用スマートフォンは日常的に使用して構いませんが、常に充電を意識しておきましょう。
教室閉鎖・授業停止の基準策定
どの程度の災害や状況で教室運営を行うか、あるいは停止するかについて、事前に基準を定めておきましょう。
ただし、実際の判断では状況に応じた柔軟性も必要です。
- 震度による基準を決めておきます。
⇒ 震度●以上は休講 等 - 警報発令時の対応基準を整理しておきます。
- ⇒ 特別警報は休講、気象警報は内容に応じて判断
- 断水・停電・通学経路の安全性など、ライフラインの状況も判断材料とします。
- 交通機関の運行状況も確認対象とします。
- 感染症等の流行状況も判断基準に含めておきましょう。
責任者の決定
上記の準備が疎かにならないよう、準備責任者を決定しておくことが重要です。
オーナーないし事業責任者は、準備責任者と連携し、定期的に(例えば月例の職員会議後など)点検を行いましょう。
発生時の行動
ここでは、教室において甚大な地震が発生したケースを想定し、基本的な流れを確認しておきます。
発生直後の行動
最優先すべきは、生徒はもちろん、スタッフご自身も生命を守るという意識です。
- 「机の下に入る」「家具などから離れる」といった行動を、明確に指示しましょう。
- 揺れが収まるまではそのまま待機しましょう。
- 退避姿勢のままでドアを開けられるようであれば、避難経路を確保します。
揺れが収まってからの行動
- 生徒の安全状況を確認します。
- 教室内外の安全状況を確認します。
- 状況により、避難行動の開始を迅速に判断します。
⇒ 津波到来が予想される地域、もしくは建物の崩壊が予見される場合は、直ちに避難を開始する。
ここで重要なのは、「その場に留まるか、避難するか」の判断です。
施設の立地や建物の状況によっても対応は変わるため、事前に判断基準を共有しておくことも必要です。
避難の開始
避難が必要と判断した場合は、速やかに行動を開始します。
- できる限り、事前に予定していた、スタッフが習熟した避難経路にて移動しましょう。
- 生徒を先導し、列を崩さないように誘導しましょう。
- エレベーターは使用しないことが重要です。
- 可能であれば、スタッフを生徒の後ろにも配置して、安全を確保しましょう。
転倒や精神的な混乱にて避難行動が中断することの無いように、「急がせすぎないこと」も重要です。
避難の完了
安全な場所に移動した後、状況の整理を行います。最低限以下の項目をスタッフが実行してください。
- 生徒全員が避難できているか、再度人数を確認します。
- 生徒個々の負傷状況も確認しましょう。
保護者への連絡と引き渡し
モバイル通信が途絶していない場合は、事前に取り決めておいた手段により保護者への連絡を開始しましょう。
モバイル通信が途絶している場合は、避難者名簿への記載や、避難所入口への掲示など、保護者が情報を得られやすい状況を迅速に作りましょう。
地域でのモバイル通信が可能な場合、最低限以下の事項を連絡内容に含めましょう。
- 避難先の場所について
- 生徒たちの安全状況について
- 避難先の連絡手段について
⇒ 携帯している業務用スマートフォンの電話番号、メールアドレスなど - 引き渡しの方法について
⇒ すぐにお迎え可能、あるいは警報解除後にお迎え可能など、状況を伝えましょう。
運営の再開
緊急対応が完了した後は、災害の全容をしっかりと把握した上で、運営再開へ向けて模索していく必要があります。
緊急時の落ち着いた行動が、その後の教室の信頼向上に結び付くことは言うまでもありません。
被害規模の把握
- 生徒や保護者のその後の健康状況や生活状況を調査する。
- スタッフのその後の健康状況や生活状況を調査する。
- 教育施設の被害状況を調査する。
- 当面の資金繰りを予測する。
これらの点を調査したうえで、運営再開の可否をまずは大まかに判断しましょう。
運営再開が可能であると判断した場合は、まずは運営計画の重要な事項から順番に決定していく必要があります。
運営方法の検討
- 教室設備についての方針を決定する。(継続利用か移転、もしくはオンライン授業への転換など)
- 運営再開の時期を決定する。
- 運営再開の規模を決定する。(全面再開か、一部再開か)
前払い授業料の補償
被災前の月謝を前払い等で徴収済みの場合、その取扱いについて保護者との同意が必要です。
保護者の希望に応じて、柔軟に対応していく必要があります。
- 振替授業による補償を行う。
- 返金による補償を行う。
- 再開後の一定期間の月謝割引ないし減免による補償を行う。
財務計画の策定
被害状況が甚大で、経済的損失が著しい場合には、行政による支援・金融機関による支援などの情報収集も必要です。
また従来の経営計画を見直していく必要もあります。状況に応じ、以下のような施策が検討できるでしょう。
- 補助金、助成金などの支給計画を調査する。
- 金融機関による特別融資計画を調査する。
- 固定費(家賃、人件費等)の見直しを実施する。
- 各種の返済や支払いについてのリスケジュールの要請を行う。
このフェーズでは、「どこまで耐えられるか」を現実的に把握することが重要です。
根性論や感覚ではなく、数字により状況を捉えることが求められます。
おわりに
災害に備えることの最大の目的は、当然ながら、お客様(生徒や保護者)の生命と安全を守ることです。
それと同時に、災害後の健全経営を維持するという観点からも、適切な行動計画が必要です。
災害時の備えを怠り、過失により事故が発生した場合、信頼を失うばかりではなく、補償等への負担により経営継続が困難となる可能性もあります。
日頃から強い意識を持ち、災害対策に取り組んでいきたいものです。
当センターでは、教室経営におけるBCP計画策定のご支援も可能です。
ご関心をお持ちの方は、ぜひお問い合わせくださいませ。
